忍び寄るモノ
え!? 喧嘩!?
岡本君と葉山先生が言い争うなんて想像もつかない。
話の内容がはっきり聞きとれるわけじゃないけど、岡本君の怒ったような声と葉山先生の落ち着いた声がするのは確かで私はどうしたらいいかを必死に考える。
誰かを呼ぶ?
──でも聞いてる感じだと岡本君が一方的に怒ってるみたいで岡本君が怒られるかもしれない。
どうしようと悩んでいると何かの大きな音がして話し声がプツリと止んだ。
……?
喧嘩はおさまったのかな……?
恐る恐る保健室の扉を開けてみると入り口のすぐ近くに葉山先生がいて私はビクっと体がはねるように動いた。
「あら? どうしたの?」
「あ、あのっ、今ここに──」
「そう言えば折笠さんは昨日体育の時間に足首をひねったそうね」
「えっ? あ、はい」
「岡本君いませんでしたか?」と続けるつもりが葉山先生に遮られるように話しかけられてきっかけをなくす。
葉山先生は優しそうな笑顔で「湿布を貼ってあげるわ」と私の手をひいた。
保健室に入れられて、私を椅子に座らせて話しかけてきながら棚の扉を開ける先生。
捻挫した生徒の手当てをする準備をしている、なんてことないことだけど岡本君の姿が見えなくて私の胸はざわついていく。