忍び寄るモノ
入り口は先生の後ろだし私達は手の動きを封じられてる。
とりあえず話が通じる可能性は低いけど先生の気をそらしてみようと思う。
「あの、先生。ラジカセはどうやって持ち出したんですか?」
「折笠さん!?」と横から怒ったような声が聞こえたけど私は聞こえないふりをして葉山先生を見つめた。
「ふふ。そんなの簡単よ。体育教師のあの男を使ってやったの。ちょっと優しくしてあげたらすぐその気になってこっそりラジカセとテープを持ってきてくれたわ」
やっぱりあの声は体育の先生だったんだ……。
確認をかねて念のために聞いてみたら先生は共犯者と言える人の正体をあっさり吐いた。
話しているうちに柴田さんの自己紹介は終わり、再生を止めるのかとうかがっていたら先生はしゃがんでラジカセを持ってまた立ち上がる。
何をするのかと警戒していたら先生はラジカセを壁に投げつけて強引に再生を止めた。
「な……っ!」
「嘘だろ……!?」
私達が言葉をなくしている間に先生はスカートの左のポケット辺りを探り、そこから鞘がついた刃物を取りだした。
「あんな記録もういらないの。あなた達を殺せば柴田君は帰ってくるんだから……!」
「危ない……!」
カラン、と鞘が床に落ちる音が響いた瞬間、先生は左手に包丁を持って私のほうに突進してきた。