忍び寄るモノ
私は岡本君にかばわれながら横へと逃げてなんとか先生の攻撃を受けずにすむ。
二人で体勢を直すと先生は顔を歪めて左手に持った包丁を滅茶苦茶に振り回す。
「どうして邪魔するの!? 岡本君は最後じゃなきゃいけないのに!!」
取り乱す先生の様子に驚きながら、私は先生が左手に包丁を持っていることにストンと納得したような気持ちが生まれる。
「あの時使ったハサミは左利き用だったんだ……」
左利きの人は矯正されて右利きか両利きになる人がいるのを聞いたことがある。
先生は普段右利きに見えたけど元々は左利きだったんだ!
私が確信を持って呟けば先生は「当たりー」とケラケラ笑う。
「たまたま入れかえ忘れてた時にあなたが使ったのよ。岡本君はごまかされてくれなかったけどね」
「前にハサミを借りた時に使いやすかったのを思い出したんだ。だからここ何日かは先生を疑ってた」
そうだったんだ……。
だけど私と岡本君に柴田さんと共通する点があるの?
しかも岡本君は私より後じゃないといけないって──……。
「ああもう時間がないじゃない! 折笠さんが先に死んでくれないと困るのよ!」