男なんていらないッ
キレイ、かわいい、女優さんみたい。
今まで、外見に対してさまざまな賛美の言葉を浴びてきた。

大きく開いた黒目がちな瞳。ぷっくりとした唇は、リップ一つで輝く。
白く透き通るような肌は、まだまだ水を弾くほど新鮮だった。

美香自身、外見が人よりも多少良いということは自負していた。


しかし、どうだろう。


外見が良いだけでは世の中うまくはいかないのだ。


外見が良い、美人だということで金儲けはできない。

成功するためには、飛びぬけて美しい外見など、無意味だ。


大学生の頃、初めて化粧をした時のことを覚えている。
高校生まではファンデーション一つ塗ったことがなかったが、大学になると洒落気づいた周りの友達に感化されて、メイクやファッションばかりを意識していた。

男のためではなく、自分が世間から取り残されないために。

しかし、気が付いたら、美香の周りには男ばかりがいた。

女友達は、本当に仲が良かった数人しか残らなかった。
今でも付き合いがあるが、大学卒業後にみんな地元に帰ってしまった。




「女優さんみたいだよねぇ。本当に。羨ましい!」

松本陽子の誉め殺しはまだまだ続いた。

「そんなに美人だったら、モテるでしょう?」
「私だったら、毎日合コンいっちゃう」


ハハハ、と愛想笑いをする美香を見て、康介がタバコに火をつけながら話の流れを変えた。


「あ、そういえば、今日は巻さんも来るからな。覚悟しとけよ、美香」


「あー。なんかそんな気がしてたから大丈夫・・・」

「ま、適当にあしらっとけよ」

「・・・うん」


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