懺悔部屋~脱出法は仲間を傷つけ食べること~
俺はそれを見て何も言えなくなった。


たったこれだけの肉で『チキンライス』は作れない。


この大きさなら、あと数か所は肉を削る必要がある。


黙っている俺を見て百合は大きく息を吸い込んだ。


「まだ、足りないよね」


「百合?」


「とりあえず止血しなきゃね」


百合はソファの上にある平たいクッションを1つ手に取り、それを嵐の腹部に押し当てた。


クッションには椅子に固定する長いヒモが付いていて、それを嵐の背中に回して固定をした。


白いクッションがあっという間に赤く染まって行く。


それでも、今できることはこのくらいしかなかった。


「どうしよう。太ももあたりから取ろうかな……」


百合が呟きながら嵐の体を眺める。


嵐はそれが理解できているのかどうかわからない表情で、ただ天井を見つめていた。
< 140 / 281 >

この作品をシェア

pagetop