懺悔部屋~脱出法は仲間を傷つけ食べること~
青い顔をしている良にそう声をかける。


正直、自分の名前が呼ばれなかった事にホッとしている自分がいる。


そんな自分を幻滅しながらも、この状況ではしょうがないと諦めている部分もあった。


誰だってあの女の声に呼ばれたくはないだろう。


「ここのキッチン、何もないわよ」


1人先にキッチンの引き出しなどを確認していた春姫が言う。


「何もない?」


「うん。ほら見てよ」


ガス台の下の扉を開けて見せる春姫。


中には何も入っていない。


食器棚の中にも何も入っておらず、冷蔵庫の中身もカラッポだ。


「どういう事だよ」


嵐が眉を寄せて言う。


「俺にもわからない。今までのキッチンには料理に必要な道具は用意してあった。


でも、ここには何もないなんて……一体、どうやって子羊のソテーを作れっていうんだ?」
< 169 / 281 >

この作品をシェア

pagetop