懺悔部屋~脱出法は仲間を傷つけ食べること~
俺と百合は目を見交わせ、そして軽く肩をすくめた。


本当は真っ直ぐ帰りたかったけれど、嵐は言いだすと聞かない性格だ。


ついていかなかったとなれば、後から文句を言われるかもしれない。


仕方なく、俺たちはその声のする方へと向かったのだ。


細い路地へと入ってみると、すぐそばで人だかりができていた。


集まっている人はみんな同じように上を見上げていたため、俺たちも自然とそちらへ視線を向けることになった。


民家に生えている立派な木の上に、同じ制服を着た女子生徒の姿があった。


女子生徒は木の枝に掴まりながら、もう片方の手を伸ばしている。


その手の先には子猫がいた。


真っ白な子猫は所々汚れていて、小刻みに体を震わせて怯えている様子だ。


「おいで。こわくないから、ね?」


女子生徒は優しく声をかける。


その声には聞き覚えがあった。


クラスメイトの月奈だ。
< 184 / 281 >

この作品をシェア

pagetop