異常って言われても構わない。
俺と明希は静かな部屋の中
至近距離で向かい合って立っている。


「………………」


しばらく続く沈黙。

人がせっかく想いを伝えたってのに
明希はポカーンと口を開けてるだけだし。

何か言えよ!(汗)

すげー恥かしいんですけど?!


「は?」


やっと明希から出た言葉はコレだし。

まさかこれだけ言ってもまだ俺の気持ちに
気付いてないとか?

それってさ…やっぱり
そんだけ可能性が無いってことだよな。

…当たり前か。

俺は男で明希も男。

最初から可能性なんて無かったんだ。

明希は鈍感なんじゃなくて
そういうことをカケラも考えてねぇから
気付かないだけなんだよな、きっと。


「し、時雨…」


明希がゆっくり近寄ってくる。

やべー何か俺泣きそうかも。


「…俺帰る。」

「え?!」


ずっと想ってきたんだ。

遊び人のこの俺がだぜ?

そんだけ好きだった。
大好きだった。

でも…無理なんだよな。


鞄を取って出口に向う。

明希にこんな顔見られたくない。


「時雨!待って!」


明希の横を通り過ぎた時、腕を掴まれた。

何すんだよ。

無理なんだろ?
明希は俺を受け入れねぇんだろ?

なのに何で…


「何で止めんだよ!」


明希を振り返って睨むと同時に
俺の顔から雫が飛んだ。

俺…泣いてる?


「時雨?」


明希もびっくりした顔をしている。


「馬鹿野郎!見んな!離せよ!」


腕を振りほどこうとするけど、離れねぇ。

明希は強く俺の腕を掴んでいる。

何でこういう時だけ!

離せ
離せ
離せ!


「時雨…っ!」


急に腕を引っ張られ
ふいに感じる明希の体温。


「…………あ…き?」


俺は明希に抱き締められていた。
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