異常って言われても構わない。
な…んで…明希が俺を抱き締めてんの?


「時雨…」


耳元で囁かれる俺の名前。

その低くて妙に色気のある声に
腰が砕けそうになる。


あれ?

こんなこと…前にもなかったっけ?

………………

あ、そうだ、思い出した。

まだ中学生の頃ある事件が起こって
俺が怪我して、心配して走ってきた明希が
俺を抱き締めたんだっけ。

大丈夫だっつってんのに
明希はごめんなごめんなって何回も謝って
泣きながら俺を抱き締めたんだ。


今と逆だな、と思う。

あの時は明希が泣いてたけど
今日は俺が泣いてんだ。


なぁ明希。

俺、お前のせいで涙もろくなったみたい。


お前に好きな奴がいるって聞いて
泣きそうになった。

勉強教えてやるって言われて
嬉しくて泣きそうになった。

俺の気持ちは伝わらねぇんだって思うと
マジで辛くて泣いちまった。


なぁ明希。

こうなった責任はとってくれんの?


*時雨side*終
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