異常って言われても構わない。
「ば…馬鹿じゃねぇの?
 俺は男で、時雨も男だぜ?
 そんなことあるわけないじゃん!」


俺は笑ってバシッと辰樹の肩を叩く。

辰樹も、だよねー冗談だよーって
いつもみたいに可愛い笑顔で
笑ってくれると思った。

だが実際辰樹の顔には表情がなかった。


「…そこで嘘つくんだ?」

「嘘って…。」


どうしたんだよ、辰樹?


「さっき言った良いものって
 明希くん達のことだったんだよね。」


俺達…?


「ここからよく見えるんだよ。
 明希くんは、時雨くんが朝練に行く時
 時雨くんのこと見えなくなるまで
 ずっと見てるよね。」

「あぁ言われてみれば見てる…かな?」

「その時の明希くんの目が
 すごく愛しい人を見る目なんだよ。」

「…っ?!」


ま、マジで?!
俺そんな顔してた?!

つーか辰樹に見られてたなんて…。


「その時の2人を見てると
 僕まで嬉しくなるんだ。」

「…何で?」

「なんか…
 大きな愛が見える気がして。」


辰樹はいつもみたいにニコッと笑う。


「ねぇ明希くん、素直になりなよ。
 本当に愛してるなら
 性別とかって関係ないんじゃないかな。」


辰樹が顔を覗きこんでくる。

俺は再び笑って
辰樹の肩に手を置く。


「ちょっと待てよ、辰樹。
 それはあくまでお前からの目線だろ?
 俺は時雨を友達としてしか思ってないし
 その大きい愛…って奴も
 ただの友情だし。」


今まで必死に隠してきたんだ。

そう簡単に明かす訳にはいかないんだよ。


「あ、そう。」


辰樹はまだ笑顔のままで
肩に置かれた俺の手を
いきなりギュッと握ってきた。


「じゃあ僕が時雨くんに告白しても
 明希くんは何も困らないよね?」
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