あふれる、想い
―shou―


目覚めたら辻が難しい顔をしながら
俺の事を見つめてた


なんかちょっと照れる


「おはよ」


「……おはよ」


俺からスーっと目を逸らした


ドクンッ


良くない事を暗示するかのように
心が痛んだ


周りを見るとまだみんな寝てる


「…私、帰るね」


そう言いながら立ち上がった辻


何だか嫌な胸騒ぎがする



このまま…また辻がいなくなりそうな

訳わからない予感がするんだ



「送って行く」


立ち上がった俺に背中を見せたまま


「いい、1人で帰る」


なぁ、何で俺の顔見ないんだよ?


部屋を出て行った辻を追いかけた





なぁ…なんでそんなに走ってるんだ?


俺から逃げてんのか?


俺…何かしたか??



外は寒くて白い息をはきながら
俺は辻を追いかけた



すぐに追いつく


俺は辻の腕を強く引っ張った


ようやく立ち止まったけど
やっぱり俺の方を見向きもしない



「…何かあったのか?
それとも俺、何かしたのか?」


「…何もないよ」


「じゃあ何で俺を避ける」


「避けてない」


「何で俺の方を見ないんだよ」


「………」


「こっち向けよ」


一体、何なんだよ


ようやく振り返った辻は
今にも泣きそうな顔をしてた

俺は咄嗟に辻を抱きしめた



「やっ…離して」


「離さねーよ」



俺はもう決めたんだ

辻が岡野を好きでも
もう二度とタイミングを見失わないって…


今を逃せば
辻は…いなくなる


…恋人同士じゃないのに
いなくなるっていうのはおかしいけど
離れていってしまう


そう感じるんだ


「やっ…嫌だよ
離して…お願い」


「何でそんなに嫌がるんだ
何があったんだよ?」


ぜってー何か理由があるはずだ

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