あふれる、想い

「うぅ…ごめんね
上條…ごめんね」


泣きながら謝りだした


またかよ…

俺は…


辻の『ごめん』が1番聞きたくねーんだよ



「ちゃんと言えよ
ごめんなんて聞きたくねーし
納得も理解もできねーよ」



「上條はいつも優しくて甘えてきた
でも…私は上條だけを見るなんて出来ないから
ちゃんと上條を見てくれる人を見つけて」



俺は一瞬抱きしめていた腕の力を弱めそうになった


なんだよ…それ


俺が辻を好きな気持ちまで否定するのか?




「何言ってんだよっ
俺は…悔しいけど辻の心から
岡野が消えない事も
辻がこれから先も
ずーっと岡野を想い続ける事も
何もかも承知でそれでも…
辻が好きで傍にいてーんだよ
俺の事…少しでも
特別だって想う感情はないのか?」




「………」



…っ…

ほんの少しで良いんだ



「俺は辻が岡野を想う気持ち丸ごと受け止める
そういう覚悟で辻の傍でいるんだ
辻を想う気持ちは岡野には負けねーよ
俺の傍にいろよ…」


頼む…

うんって言ってくれ


俺の傍にいるって…



岡野を好きでもいい


そのままの辻を受け入れる覚悟なんて
とっくに出来てるから…



なぁ…

これっぽっちも俺を好きっていう気持ちは

辻にはねーのかな?


俺は辻を困らせてるだけなのか?!


それでも…傍にいてーんだよ


「俺から離れようとするなよ」


「でも…」


「俺から逃げんなっ」


辻はビクついた


「ゆっくりで良いから
考えてくれよ」



「…わかった」



辻からようやく出た言葉

もうごめんは聞かない


俺はあたって砕けても
粉々になるまであたり続ける



俺は辻を家まで送って
自分も家に帰った


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