あふれる、想い

…何も言えないよ


「はぁ~」

矢野君はため息をついて頭を掻き始めた


「岡野は今はどうしてるの?」

「あぁ蓮とは最近連絡とってねーんだよな
蓮も忙しいみたいだし…」

「そっか」

「男同士ってそんなに頻繁に
連絡取り合うもんじゃないし
海外だから余計にな…」


そうだよね…
男の子って女の子みたいに
電話とかメールとか沢山する訳じゃないもんね


「俺は上條と付き合っても良いと思う
…でも…蓮と別れるとかはやめて欲しい」

「……何で?」

「蓮が……前に言ってた
他の男にいっても良いけど
別れは絶対に聞かない
どうしても別れたいなら
日本に帰ってから聞くって…
直接聞かなきゃ別れないし
自分の事忘れて欲しくないからって…」


だから…連絡先を教えてくれなかったのかな?

私が蓮を忘れるなんて
一生かかっても出来ないよ…


「それなら上條と付き合えば?」


明日香が眉間に皺を寄せながら口を開いた


「海外なんて遠い所にいって
連絡先は教えないし
別れる事もしない
他の男にいっていいって言うなら…」


「明日香!!!!」

矢野君が止めるけど、明日香は止まらない


「だって…中途半端に繋ぎとめて
それって辛いだけじゃん」

「辛いのは辻だけじゃなくて蓮もなんだ」

矢野君の一言に胸が痛くなった

「俺は辻が望むなら…
上條と付き合っても良いと思う
だけど…蓮が帰ってきたら会ってやってくれ
その約束だけは守って欲しい」

矢野君の言葉に頷いた

「決めるは愛結だよ
辛いなら…逃げて
甘えて頼っても良いと思う」


でも…そんな事出来ないよ


「愛結は色々考え過ぎちゃう所があるけど
相手が云々より自分の気持ちに
正直なって動いてみなよ」


自分の気持ちに…正直に?


「自分の心だけに向き合ってみなよ」

「…そうしてみる」


矢野君と明日香にお礼ともう一度
ごめんを言ってから家に帰った


自分の気持ちに向き合う…か…

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