あふれる、想い
ようやく辻が口を開いた

「蓮がいなくなって最初は
…辛くて辛くて
悲しくてどうしようもなかった」


辻は壊れちゃうんじゃないかってぐらい
落ち込んでて
見てる俺も切なかったし苦しかった


「蓮に傍にいて欲しくて
でも…傍にいなくて苦しかった
毎日毎日、蓮の事ばかり考えてた」


わかってた事

だけど…聞きたくねーよ

耳を塞ぎたい

だけど…動けないんだ

辻が俺だけを真っ直ぐ見つめてるから…

目を逸らす事すら出来ない


「蓮がいなくなって
毎日、色がなくなったみたいだった
私の中で私も知らないうちに
蓮が全てになってて
蓮がいなくなったのについていけれなくなってた」


もう…わかった


俺は完全に辻に振られる


岡野の事をどれだけ好きか
もうそれ以上聞きたくない

いや…聞ける自信がない


辻の岡野への気持ちを
ただ聞くだけなんて…無理だ


「蓮は私にとって太陽みたいな人」


俺はようやく辻から目線を外して俯いた

「もう…いい
どれだけ岡野が好きかわかったから…
やっぱり俺が入れる隙間はなかったんだな
最初から無謀だったな」

わかってたけど…わかってたさ

それでも…辻が欲しかった

何をしてでも

どんな手を使っても

だけど…残ったのは苦しみだけだ

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