あふれる、想い

―ayuka―


初めて翔に抱かれた


付き合ってたら
いつかはそういう日がくる


そう覚悟はしてた


翔が私の気持ちを気にして
半年間も我慢してくれてた事も…


翔に抱かれた後

涙が溢れた



翔が優しく親指で
涙を拭ってくれる


「…後悔してんのか?」


すごく切なそうな苦しそうな表情



「してないよ
翔が優しくしてくれたから嬉しかったの」


不安にさせてごめんね


愛を深め合う行為のはずなのに
不安を増幅させてしまった


翔を不安にさせてるのは
私の気持ち


だから…


「翔が好きだよ」


「俺も…好きだよ」


翔は優しく微笑んだ後
瞼にそっとキスをした


翔が乾燥機で乾かしてくれた制服に着替えて
送って貰って家に帰って来た


部屋に入って、クローゼットから
コルクボードを取り出した


翔と付き合い始めて
クローゼットに押し込めていた写真


翔と付き合う

そう決めた時に
翔を不安にさせない為に
蓮を封印しなきゃいけないって思ってた


遠くでいる蓮より
近くでいる翔を見よう


翔だけを好きにならなきゃって…


でも、ネックレスだけは外せなかった


ネックレスを握り締めて
写真の中で笑う蓮を見つめた


「蓮…ごめんなさい」


待ってるって約束したのに…


もう待つ事は出来ない


翔に抱かれたから…

蓮だけの私じゃなくなったから…

翔だけを見つめていかなきゃいけない


コルクボードをクローゼットの
奥深くに仕舞い込んだ


ネックレスも…外さなきゃいけないよね


だけど、もう身体の一部と化してる

これだけ…ごめんね、翔

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