あふれる、想い
―shou―


愛結花を抱いたあの日から
愛結花は俺に笑顔を向けてくれる


だけど…俺はそれを素直に喜べない


愛結花には気づかれないように
笑顔を返す


みんなで遊んだり
2人でデートだってした


だけど…教室でいると
色々と考えてしまう


後悔してるんじゃないかとか

岡野に申し訳なく思ってるんじゃないかとか…


そんな俺の様子に気づいたのは慶吾だ


「翔、辻と何かあったのか?」


「何もねーよ」


笑って返す


「そっか」


慶吾はそれ以上聞いて来なかった


だから、俺もそれ以上言わなかった


愛結花を家に送った後
ベッドで横になって考えた


俺に岡野を忘れさせるなんて
無理だったんじゃないか


付き合ってて意味あるのか?


そう思ってたら、インターフォンが鳴った


誰もいないから、しぶしぶ玄関を開けた


両手にビニール袋を提げて
満面の笑みを浮かべてる…慶吾


「遊びに来た」


「おう、上がれよ」


慶吾を俺の部屋に上げた


慶吾は部屋に入った途端
テーブルに酒や食べ物を並べだした



「何があったか全部聞くから
一先ず飲め」


俺は慶吾の気遣いが嬉しくて
缶ビールを開けて飲んだ


慶吾も飲み始めた


「何があったんだ?」


俺は愛結花を抱いてから思ってた事を
慶吾に聞いて貰った


1人で抱えておくには
俺にはもう限界だった


「ちゃんと別れてないのは…キツイよな
でも、今は辻が見てるのは翔だろ?」


「俺に…岡野を重ねてるだけかもしれねー」


「そんな事ないと思うぞ」


慶吾が真剣な顔をして言うけど
ずっと抱えてた気持ち


俺は岡野の代わりでしかない


「とりあえず今日は愚痴も何もかも
全部聞いてやるから飲め」



俺と慶吾は浴びる程、酒を飲みまくった


さすがに酒に強い俺達でも
だんだん酔っ払ってきた



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