あふれる、想い
―ayuka―
翔が相当慌てた様子で
今日は一緒に帰れないって言うし
明日香と帰る事にした
矢野君は今日は家の都合で休みなんだとか…
「久々にケーキ食べて帰らない?」
「いいよ~」
「最近、出来たカフェがあって
おすすめなんだ」
「楽しみ」
明日香が見つけた出来たばかりの
カフェに行く事にした
裏門から出た方が近いらしく
普段は使わない裏門に向かった
「あれ?
あれって上條じゃない?」
明日香が指差す方向に
赤い車の横で女の人と話している翔が見えた
な…んで?
用事って…女の人と会う約束だったの?
「静かに近づいてみようよ」
明日香が険しい表情で言うから
静かに木陰に隠れて近寄った
「翔君、さっき相当慌ててて
携帯忘れたでしょ?
羽菜に電話してもデートで会えないっていうから
学校聞いて届けに来たの
ないと困るでしょ?」
さっき…
翔は寝坊したって言ってたよね?
携帯忘れたって事は…
私が電話した時…この人といたの?
……浮気したんだ
って、私も蓮の事があるから言えないよね
そう思った瞬間
翔と目が合った
どうしていいかわからなくて
微笑むしかなかった
「愛結?」
「明日香、ごめん
ケーキはまた今度にして」
「いいけど…だいじょ」
明日香の言葉を聞かずに
その場から走り出した
浮気されても仕方ないし
責める資格すら私にはない
翔が不安に思ってたの気づいてたのに…
「あゆっ~」
翔の声が聞こえるけど
振り返らずに走った
私が悪い…でも…何も聞きたくない