あふれる、想い


「翔は蓮を思う事を許してくれたのに
私は浮気を許せない
そんな狭い心しか持ってない
私は翔の隣にいる資格がないと思う」


「俺が傍にいてくれって言ってるのにか?」


「翔だけを見よう
そう決めたばかりだった
これからは翔だけ…そう思ってたんだよ」


「ごめん…本当ごめんな」


翔の温かさに包まれる

このまま包まれていたい

でも…あの人の事も抱きしめたんだよね




同じ状況になって

翔がどれだけの思いを抱えていたのか

それが

私の予想や想像以上だった事を

ようやく知る事が出来た


もう…これ以上
翔にそんな思いをさせられない


それに…私は出来そうにない


して貰ったくせに…出来そうにないんだ


心が狭い私





両手を掴んでしまった時から

もう決まっていたかもしれない


どちらも手に入れられないと…


翔の手を掴んだのは間違いだったかもしれない


それでも…


翔の優しさ

笑顔

明るさ

全てに支えられて救われた


翔の深い思いがなければ
私は今みたいに笑えてなかった


でも…私が笑えるようになった分だけ

翔を傷つけ…苦しめてきた


両手に掴んでいた手は

今は…もう…ない



何もなかったように蓮の所には戻れないし

翔の手を掴む事も出来ない


どちらも望んだ時点で間違いだった…


二兎追うものは一兎も得ない


わかってたけど…強欲さに負けた


いつもそう


最初は翔への片想いで苦しんで
支えになってくれた蓮を傷つけた


今は蓮の事で翔を傷つけてる


どちらも利用しているだけにしか
すぎないかもしれない


でも…確かにそこには

『スキ』

その感情があったんだ

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