あふれる、想い
「明日香いつからいたの?」


「あっ!!!
やっと帰って来た!!」


だいぶ待ってたのかな?


翔じゃなくて安心した


だって…さすがに後ろめたい



「ごめんね」


「岡野の事思い出してたんでしょ?」


「…うん」


何でわかったんだろう


「岳志が
『今日は蓮が旅立った日だから』
って、愛結の事を心配してたからさ
居てもたってもいられなくて来ちゃった」


舌をちょっと出して
悪戯っ子なような笑顔を向ける明日香


嬉しくて涙が溢れた



遠く離れても蓮を親友だと思ってる矢野君

こうやって私の事も心配してくれてる



心配していつ帰って来るかわからない私を

ずっと待っていてくれた明日香



2人には感謝しきれないぐらい

…本当にありがとう


優しく背中を擦ってくれる明日香の手が
心がすごく温かい


「…ありがとう」


明日香は何も言わず、背中を擦り続けてくれた



だいぶ落ち着いてきた瞬間


「落ち着いた?
落ち着いたなら部屋に入れて
待ちくたびれたよ~」


私はようやく笑って
明日香と部屋に上がった



座った途端、クッションを抱きしめた明日香


明日香が取ったクッションの横には
蓮と初めて遊びに行った日

ゲーセンで取ってくれたクッションが
そのまま置かれてる


私はネックレスを引き出しにしまって
そのクッションを抱きしめた


今日だけは蓮との思い出を思い出したい


「岡野がアメリカに行ってもう1年なんだね」


もう…なのかな

まだ…なのかな


たった1年で色々な事が変わってしまった


「そうだね」


「1年て短いようで長いよね
愛結は今…辛くなったり
悲しくなったりしてない?」


「うん
翔もすごく大事にしてくれてる」


「そっか…ならいいんだ」


「何か飲み物持ってくるね」



明日香に心配かけたくなくて
私は一度部屋を出た



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