あふれる、想い
―shou―


数日後


卒業式の練習で登校した


俺は愛結花に中庭に呼び出された


ずっと愛結花の傍にいれば

こんな選択を

お互いが

しなくてすんだのかもしれない



それでも…前に進まなきゃいけない


俺を選んでくれるか…


選んでくれるよな?


いつもの木の下で座り込んだ




「…翔…いつも優しさをありがとう
翔といれて幸せだった
翔の事…好きだった」



「…俺とは遠距離は無理?」



「翔と遠距離が無理なんじゃないの
私が…甘えすぎてた
私は1人になるべきだと思う」



「…俺…別れないからな」


思わず口から零れた


愛結花は切なそうに俺を見つめた



「…何もなかったように
翔と続ける事も出来たと思う」


「…じゃあ、そうしろよ
俺の事少しでも好きなら…俺といろよ」



「…翔といると温かくて
居心地良くて…すごい幸せだった」



「離れてても不安にさせない
幸せにするから…」


みっともなくていい

俺は愛結花を繋ぎ止めたい


「きっと翔は幸せにしてくれると思う
それはすごくわかる
でもね
私が翔を幸せに出来る自信がないんだ」


「俺は愛結がいてくれればそれで幸せだ」


「今まで与えて貰うばっかりだった
翔の事は好き
でも…蓮の事も好き」



「…岡野が戻ったらよりを戻すのか?」


愛結花は強い眼差しで首を左右に振った


「それは出来ない
翔の事も好きだから…」



俺はずっと岡野に敵わないと思ってた


俺だけを見てくれてる


だけど…帰ってきたらどうなるか

わからない


そんな気持ちはあった


だけど…今の愛結花の中で対等なんだ


「じゃあ俺といてくれよ?」


「こんな気持ちで翔ともいられない」



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