あふれる、想い
―ayuka―


蓮が俯いて


「勝手すぎるよな…
誰かの所にいっても
最後には俺の所に戻ってくれると思ってた
都合よすぎだよな
…帰って来ない方が良かったかもな
いや、顔を出すべきじゃなかった
ごめんな」


言い終えた瞬間、動けなかった



頭の中では


そんな事ない


そう思ってたのに…


言葉を発する事すら出来なかった



蓮は顔を上げた後

私の方を微塵も見ずに

扉に向かってドアノブに手を置いた




頭で考えるより

理性より…何より



身体が動いてた



気づくと蓮の服の袖を掴んでた



固まったまま動かなくなって蓮



翔の事も

何もかも頭からなくなってた



ただ思ったのは…このまま蓮を行かせたら

もう2度と逢えないって思った

それだけが頭に浮かんだんだ



「もう誰も傷つけたくない
……優しさに揺れ動いて甘えたくないんだ」


何言ってるんだろう…


支離滅裂



そんな事わかってる



でも、蓮は私の方に振り返って

真剣に見つめてくれたんだ




「誰も傷つかない恋愛ってないんじゃないか?」


目を見開いた私に蓮は続けた



「両想いになっても…付き合ってても
大きい事や小さい事
お互いを傷つけあいながら
そこから幸せを見出していくんじゃないか?」



何も言えなかった




「現に俺は今、傷ついてる
だから…誰も傷つけないなんて無理なんだ
だからこそ…自分の気持ちに素直になって
努力するしかないんじゃないか?」



…素直になってもいいの?




「でないと誰かを傷つけた意味がないだろ」



でも…


やっぱり素直になんてなれない



だって…蓮まで傷つけた



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