あふれる、想い
穴場な事と春って事もあって
人が全然いないし
海もすっげー綺麗だった


太陽が反射して光ってる


愛梨と手を繋いだまま
海を眺めた


心が落ち着くな


愛梨も静かに海を見つめてるのが
隣からの雰囲気でわかる



「ちょっと座るか?」


「うん」


俺達はそのまま手を離さず座った



「今日は連れて来てくれてありがと、蓮」


「また来ような?」


「……今なら言える気がする」


「何を?」


すっげードキドキする

俺の所に戻ってきてくれるのか?

それとも…


愛結花は左手のポケットから
何かを取り出してそれを握り締めた


何だろう…


何だか…嫌な予感がする


「ずっと蓮に言いたかった」


…聞くのが…怖い


「いつも私の傍にいてくれてありがとう
優しくしてくれてありがとう」


離れて行くな

…情けないけど…聞きたくない

耳を塞ぎたい


だけど…この手を離したくない

俺は左手を見つめた


「私ね、ずっと一緒にいても
また離れていくんじゃないかって臆病になってた
蓮も翔も離れていったから…
蓮も離れていくんじゃないかって…」


…愛結花は絶対言わないと思ったから
酒を飲ませて聞いた


俺は今、その事を心底後悔する
言って貰えるなら…あんな事するんじゃなかった


「ごめんな」


「えっ…なんで???」


「卑怯だと思うけど…旅行で酒飲んだだろ?」


「うん」


嫌われるかもしんねーな…
でも、言わなきゃな


「愛結花は本音言わないと思って
酒の力を借りて…今の言葉言わせた

卑怯な事してごめんな」



「ううん
ずっとちゃんとせずに
はっきり言わなかった私が悪いから…」


怒るかと思った愛結花は微笑んで
眉間に皺を寄せて呟いた


「そんな事をさせたのは
私がいつまでもウジウジしてせいだよ
だから、蓮は悪くない」

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