あふれる、想い
―syou―


慶吾と廊下を歩いてると


ドンッ


誰かがぶつかってきた



「…辻?」


ぶつかってきたのは辻だった


「何があった?」


「何でもない」


「何でもなくないだろ」


涙を流してたくせに…

逃げようとした辻の腕を掴んだ


「離して~」


腕を振り回すけど
俺の力に敵う訳ないだろ


「慶吾、ごめんな」


「おう、頑張れよ」


慶吾に先に食堂に行ってもらって
俺は離れたがる辻を無理矢理また引っ張って
中庭の木陰に連れて来た


意外と人がいない


「…どうした?」


「本当に何でもないの」


笑って答えるけど辛そうな顔すんなよ


「言えよ?」


「ごめん…言いたくない」


「そっか」


俺はそれ以上聞かず木陰に座った


「座れば?」


辻は座ろうとせず空を見上げてた


何で俺こんなに好きって気づくの遅かったんだろう


辻は良い所をたくさん持ってる

顔だって特別可愛いって感じじゃないけど
コロコロ表情が変わって…可愛い


今はただ苦しそうに空を見上げてるけど…


「辛いなら俺が支えになるから…」


また俺の隣で笑ってくれよ

< 40 / 290 >

この作品をシェア

pagetop