あふれる、想い
―ayuka―

上條が気を遣ってくれるのがわかる


でも、可愛いって言われた時
すごく大事な事に気づいたんだ

私は他の誰かじゃなく
岡野君に可愛いって言われたかったんだ


上條の事は好きだったから
正直言うと嬉しかった


でも…心が…違ったんだ


私の中で短い間なのに
上條の事は思い出になって
岡野君だけになってた


「上條ありがとうね
でも、やっぱり私は友達としか思えない」


これが正直な気持ち


「それでも俺は辻が好きなんだよ
しつけーなって自分でも思うけど
どうしようも出来ないんだよ」


真剣に見つめられて…ドキッとする


私が上條を好きだった時
同じ気持ちだったから
上條の気持ちがよくわかる


だからこそ…このままじゃ駄目なんだ


「俺をもう一度好きになってくれる可能性は
もう1%もないのか?」


ない…とは言いきれない


思い出って思ったけど
現に今、心が揺さぶられてる


でもね…
誰よりも傷つけたくないって思うんだ


誰よりも…岡野君を…


「ない」

はっきり言う事も時には必要だと思った

だから…中途半端な事はしないよ

もうあんな思いはするのも
させるのも嫌なんだ


「なんで…岡野なんだよ
なんで俺じゃねーんだよ」


上條に抱きしめられた

すごく力強くて痛いぐらい


「本当にごめんなさい」


謝る事しか出来ない



「…ごめんな」


上條はゆっくり私から離れた

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