あふれる、想い

―ren―

どこ行ったんだ?

学校中を探すけど辻がいない

授業が始まる直前
教室を覗いたらカバンはあった

だから、まだ校内にいるはずだ


昨日メールで言ってた隣のクラスの友達か?

隣のクラスを見るけど…居ない


どこに行ったんだよ


携帯にも出ねーし!!


もう一度、教室を覗いた


上條の机の上にカバンがあるのに…

あいつも教室にいない



俺は思った


絶対、2人は一緒だって


何やってんだ…俺は!!


辻は前は上條が好きだったんだ

いくらでも気持ちが戻る可能性はある


俺は途端に不安になった


今この瞬間にでも
辻の気持ちを上條に持ってかれちまったら
…どうしよう


俺はもう一度
辛く苦い思いをするのか?


もう一度なんて…無理だ


だって、俺は辻の気持ちが
一度自分に向いた幸せを知ってる


上條もこんな気持ちだったのか…


ただ好きなだけだった時より辛い


でも、俺はずっと辻だけを見続けた

上條とは違う

自業自得だろ

だから…俺から辻を奪っていかないでくれ


俺は必死で学校中を探した


2人で学校を抜けだしてるんだろうか


不安ばかりが胸を押し寄せる


「はぁ…はぁ…くっそ~」


やるせない気持ちで壁を叩いた


「…いって~」

俺はそのまましゃがみこんだ


壁なんて叩いてもどうしようもねーよ


辻…どこにいるんだよ

今すぐ辻に会いて~

俺はもう一度走り出した

< 68 / 290 >

この作品をシェア

pagetop