甘党オオカミくん
「…はぁ」
愛美の去っていった方を見ながら俺はため息をついた。
つきあって一ヶ月。
したことといえば、手をつないだり、軽く抱きしめたりすることだけ。
それすらも愛実は緊張するらしく、そのたびに体をこわばらせている。
一度、予告せずに抱きしめたときはすごく逃げられた。
でもそれは仕方ないよね。
可愛かったんだから。
どうしようもなく触りたいときってあると思うんだよね。
…まぁ、逃げられたことで俺の心が…多少、傷ついたのは確かだけど。
抱きしめるだけでもそうなんだから、キスなんてした日にはどうなることか。
『キライ』と言われたら立ち直れないかもしれない…なんてね。
頭の片隅で働いた理性に少しばかり感謝する。
…それにしても。
あれだけ迫ったのに気づかないとか…。
愛実の鈍さにある意味感心する。
「…いったい何をがんばるつもりなんだろうね」
ひとり残された廊下で俺はぽそりと呟いた。