甘党オオカミくん

あれはまだとーやとつきあう前のこと。


廊下の窓から中庭を見下ろしていた私の視線の先に実習が終わったあとらしい女の子と、とーやがいた。


手にしたお菓子を差し出した女の子にとーやはひとつため息をつくと、気だるげにこう言ったんだ。



「俺のために作ってくれたの?…ふぅん、でもそれって確か甘さ控えめのお菓子だったよね?じゃあいらない。それに焦げてるし…仮にとはいえ、好きな男にあげるんならもう少し出来のいいものもって来なよね」



遠目に見ていた私にはそれが焦げているかどうかなんてわかんなかった。


だけど相手の女の子はショックを受けたようにその場に固まっていた。



「…次に成功したからって受けとるかどうかはわからないけどね。ま、がんばって」



そう言い残してとーやはどこかに行ってしまったんだ。


まさかその時はとーやが自分の彼氏になるなんて思いもしなかったのだけど…。


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