甘党オオカミくん


ーなんでこうなったんだろ?



ちゃんと生地は泡立てたし、粉もふるって入れた。


オーブンの温度だってレシピを何度も確認したのに。


ふんわりとした生地の甘いマフィンが仕上がるはずだったのに、出来上がったマフィンは真ん中がへこみ、わずかに焦げて見るからに固そうだった。


一応ラッピングしてはみたものの、とてもとーやに渡せる代物ではないのは一目瞭然。



「…何がいけなかったんだろ?」



伊織や他の女子たちの作ったものはふんわり美味しそうにできていたのに…。


手にしたマフィンを眺めながら中庭を歩いていると、ふと人の気配がした。


顔を上げると、視界の先にベンチに座った男子をとらえた。


仮名翔(カリナ ショウ)。
隣のクラスの一風かわった男子だ。


無造作にセットされた髪をチェーンがついた二段ヘアピンで留め、ゆるく結ばれたネクタイの下のシャツは着崩されている。


カッコイイけど小柄なせいか影でカワイイとも言われていて女の子たちからの人気も高い。

しかし人を寄せ付けない雰囲気をまとっているため近づけないと女の子たちが言っていたのを聞いたことがある。


いうなれば孤高の一匹狼、らしい。


授業をサボったことのあるらしい彼は、なんというか、一般的に言う不良をしているみたいだ。

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