甘党オオカミくん
「おい…」
その眼力の鋭さに背筋が凍りつく。
「あ、あれ?わたしなんで見下ろされて…」
「へぇ…自分からフラフラと寄ってきたくせに覚えてない、と?」
どうやら私は引き寄せられるようにベンチ前にしゃがみこみ、箱を覗きこんでいたらしい。
いきなり現れた女が自分のお菓子をまじまじと見つめていたら「なんだコイツ」と思われて当然だ。
しかも、箱の隙間から中身を見ていた私は明らかに不審すぎる。
ーお、怒ってる…よね?
気分はヘビに睨まれたカエル。
どうしよう、どうしよう。
な、何か言わないと…!!
パニックになった私の口から飛び出した言葉は…
「タルト、美味しそうだね!!」
だった…。