甘党オオカミくん
私の発言に仮名くんは驚いたように一瞬目を見開いた。
な、何言ってんの、私!!
タルトは美味しそうだけど、今言うべきことはそれじゃないでしょー!!
えーとえーと、何だっけ、何を言えばいいんだっけ?
あまりよくない頭はパンク寸前。
視線をさまよわせながら私は必死に言葉を探す。
「い、いやあのっ。えっとそうじゃなくて…」
「えっ…違うのか?」
仮名くんは急に不安そうな目をしてこちらを覗きこんできた。
くりっとした大きな瞳が間近にせまり、一瞬ドキッと胸が高鳴った。
か…っ、かわいい!!
先ほどの眼力はどこへやら。
まるで子犬のようにかわいらしい瞳を向けられて目がはなせない。
「え、あのっ…タルトは美味しそうだと思うよ!!」
「そっか」
仮名くんは瞳を伏せると私から離れた。
なんとなくわずかに微笑んだような感じがしたのは気のせいかな?
…というか、怒ってないのかな?