甘党オオカミくん
「ここ、座れば?」
どうすればいいのかわからずその場にたたずんでいると、仮名くんは自分のとなりを指差した。
「え…あの」
「食べたいんだろ?これ」
箱の中身をちらりと見せながら仮名くんが聞いてくる。
箱の中のタルトはとても魅力的な艶やかさをみせて私を誘う。
「うん!!食べたいっ!!」
反射的に答えてハッとする。
「…あ」
「どうした?」
「やっぱり…いい」
私は持っていた紙袋の持ち手をぎゅっと握りしめながらうつむいた。
本音を言えば食べたいけど、食べるわけにはいかないってことに気づいたから。
だってこんなの食堂にないし、この学校のまわりにケーキ屋さんなんてない。
買ってきたみたいにきれいだけど、きっと誰かの手作りだと思うし…気持ちのこもったプレゼントを私が食べていいはずはない。