甘党オオカミくん

「なんで逃げる?」



「なんでって…」



なんとなく怖いから…なんて言えるはずもなく、私は視線をそらしてうつむいた。



「…はぁ」



隣からひとつため息が聞こえたかと思うと、



「こっち向け」



あごに手をかけられ、強制的に上向かされた。


ふいに仮名くんの顔が間近に迫り、ドキッとひとつ鼓動が跳ねた。



えっ…!?



まるでキスをするんじゃないかっていうくらい近い距離に仮名くんの顔がある。



「じっとしてろ…」



吐息まじりにつむがれる言葉。

少し伏し目がちに見つめてくる瞳。

そして…頬をゆっくりと滑る指が私の鼓動を加速させる。



まさか…お礼にキスさせろ、とか…?



自意識過剰な考えが一瞬頭をよぎる。



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