甘党オオカミくん

｢あっ、それは｣



仮名くんが手にしたのは私のマフィン。

改めて見るとひどい出来だ。

仮名くんのタルトを食べたあとだから余計にそう見える。



｢失敗しちゃって…私が食べるつもりで｣



｢ふぅん。でもラッピングしてあるってことは誰かにあげるつもりだったんだろ？｣



｢そうだけど…｣



いくらきれいにラッピングしたとしても中身のひどさは隠せない。

とても人にあげられたものじゃないのは自分でもよくわかっている。


楽しみにしてくれていたとーやには悪いけど、渡せないよ…。


ため息をついていると、


｢オレがもらっていい？｣


思いもよらない言葉が聞こえてきて私は目を見開いた。



｢えっ？｣



｢だって自分で食べるんだろ？だったらさっきのタルトと交換ってことで…ってタルトはもう君のお腹の中だけど｣



ははっと軽く笑う仮名くんにつられて私の頬も自然と緩む。



｢ふふっ、そうだね。じゃあ交換ね｣



マフィンを差し出すと仮名くんは嬉しそうにそれを受け取ってくれた。



｢ありがと。なあ、ところでさ…マフィンを上手く作れるコツを教えてあげようか？｣



受け取ったマフィンをまじまじと眺めながら仮名くんが聞いてきた。