甘党オオカミくん
私は離れた席にいるとーやをチラリと見る。
とーやがこちらにくる気配はまだない。
私はできるだけ声をひそめて、伊織にだけ聞こえるようにポソリとつぶやく。
「実は…マフィンもうないんだよね」
「は?」
伊織はポカンとした顔をした。
そりゃそうだよね。
ラッピングを丁寧にしてたの知ってるしね。
「…え、なんでないの?…まさかとは思うけど」
捨てた?とでも言いたげな瞳でのぞきこまれて私はあわてて言葉を返す。
「や、あの、捨ててないよ!!ただ…仮名くんと食べちゃっただけでっ!!」
「…仮名?」
…あ。
しまった。
口をつぐんでも、時すでに遅し。
「ほぅ?それはどういうことかな?」
おもしろいことを聞いた、とでもいうように伊織の瞳がキランと光ったような…気がする。
「これは詳しく聞かせてもらわなくちゃね~」
さぁ行こう、とばかりに伊織は私の肩に手をまわす。
わぁん、どうすればいいのぉっ!!