甘党オオカミくん
「ねぇ…ダメ?」
視線に耐えきれずに少し瞳を伏せると、さらに色気を増した瞳でとーやは私を覗き込んでくる。
ええと…ええと…
これはつまり、アメだけじゃ糖分が足りなかったってことだよね?
アメ以外に私があげられるものって…
何かあったかな、と必死で頭を回転させると、あることを思い出した。
あっ!!
そういえば、今日って女子だけ調理実習あったっけ。
たしか作るのはマフィンだったはず。
そっ、そっか。
それが欲しいってことね。
なんだ、それくらいなら…あげられないこともない、かも?
う~ん…でも…。
………。
今回は、いいか。たぶん…大丈夫だと思うし。
うん…大丈夫だと思いたい。
「うん、いいよ」
ニコッと笑って答えるととーやが一瞬息をのんだ気がした。
「…っ、いいのか?」
とーやは頬を紅潮させながら嬉しそうに確認してくる。
確認したくなるのも無理はないと思う。
だって、手作りのお菓子なんて今まで一度もあげたことなかったし。
でも…あげると決めたからにはがんばらなきゃね!!
成功させるためにもすぐにレシピを見直さなくちゃ!!
「うん、がんばるね!楽しみにしててね!!」
私はするりととーやの腕から抜け出すと、レシピを確認するために教室に向かって走り出した。
「え?」と、なぜだか困惑ぎみのとーやをその場に残して…。