甘党オオカミくん


そこにいたのは「孤高の狼」と噂されている仮名翔。
しかも手にしているのは漫画雑誌ではなく、普通のファッション誌のようだった。


へぇ、不良でもファッションを気にするの…まあ、不良だからこそ気にするのかな。


どんな服を見ているのか気になった俺は通りすぎざまに雑誌を覗き見る。
ところが、開かれていたのは服ではなく、広告ページだった。


開いていたページに載せられていたのは、誘惑するかのようなポーズを決めてこちらに視線を投げかける男たちの写真。

少しばかりはだけた胸元や首筋、手首などに絵に描いたようなキスマークが付けられている。

彼らは男女共に人気の男性歌手グループStylish(スタイリッシュ)。

仮名翔はどうやらそのグループの新曲のCD告知ページを見ていたらしい。

そこに書かれていた新曲のタイトルに俺は思わず立ち止まった。



「シークレットキス…?」



小さくつぶやいた言葉に仮名翔の肩がぴくりと反応する。
そして…ゆっくりと首を後ろに傾けて俺を見上げた。


< 54 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop