甘党オオカミくん



「あ、ごめん」



雑誌を後ろから覗かれて誰しもいい気はしないだろう。

友達ならまだ許せるかもしれないけど、直接言葉を交わしたこともないような人では気分を悪くしても仕方がない。

そう思ってとっさに謝ると、仮名翔は一瞬きょとんとした顔をしたあと、



「いや、別に気にしてないけど。ところで、このアーティスト好き?」



普通に話しかけてきた。
どうやら怒ってはいないらしい。

それに内心ほっとしながら質問の答えを考える。


うーん。アーティストが好きか、か。
別に好きでも嫌いでもないけど、どちらかを決めなければいけないなら、好き…な部類に入るかもしれない。



「まあ…、好きかな」



「そうか。この新曲聞いた?」



雑誌を指しながら仮名翔が聞いてきた。



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