甘党オオカミくん
「なるほどね。…で、砂原のマフィンはなくなった、と」
買い物を終えて、歩きながら話を聞いていた伊織は納得したように頷いた。
「うん…とーやにマフィンをあげるって言ったけど、改めて見るとひどいなあって思って、自分で食べるつもりだって言ったら…ね」
でも…とーやに悪いことしちゃったな。
帰りぎわのとーやの行動を思い出すと胸が痛い。
あんなに私のマフィンが食べたかったなんて思わなかった。
簡単に他の人にあげるんじゃなかった。
ため息と共に視線を下に落とすと、さっき買ったマフィンの材料の入った袋が目に映った。
「でもそれで良かったんじゃない?今度はうまくいくかもしれないじゃない」
その言葉に弾かれるように顔を上げると、笑顔の伊織と目が合った。
「そーだよね!!今度はうまくいくかも!!」
「うんうん、そうだよ。…で、ものは相談なんだけど」
「うん?」
なんだろう。
伊織の瞳が妖しく光っているような気がするのは…