甘党オオカミくん
そんな私に気付いたのか、仮名くんは視線を上げてこちらを見た。
「で、これをオレに見せてどうしたいの?」
「し、指導してもらいたいなと思ったの」
「ふぅん。さらなる指導をオレに頼むの?」
仮名くんの目が細められ妖しく光る。
わずかに色気を纏った視線に視線がはずせない。
呑まれてしまいそうになるのをぐっとこらえ、私は一度キュッと唇を引き結んでから口を開く。
「お願いします」
「んーでもなぁ。オレも暇じゃないし、あきらめて?」
仮名くんは先ほどの妖艶さとは全く違うわいらしい笑顔を見せてきた。
はうっ。
それは反則だよ、仮名くん。
でもでも、私だけに向けられた仮名くんのスマイルって……なんか…いい、かも。
めったに見られない笑顔にくらくらしているうちに仮名くんはお弁当を片付けると腰をあげた。
このままだと行ってしまう。
そう思ったとたん、体が勝手に動いた。
「仮名くんお願い!!私、どーしてもうまくなりたいのっ」
くいついて離さない勢いでシャツをつかむと、驚いたように瞳が見開かれた。
「…お願い」
下から見上げていると、仮名くんはしばらく困ったように瞳を泳がせていたものの、観念したのか仕方なさそうに瞳を伏せた。