甘党オオカミくん
「愛美……が足りないんだけど」
ぽつりと呟きながら愛美に顔を寄せるとほのかに甘い香りがした。
まるで蜜蜂を誘う花のように甘美な香り。
「甘いものが足りないんだよね?…っと、わわわっ」
甘い香りに誘われるように愛美にもたれかかり、その背に腕をまわす。
「確かポケットにアメが…って、とーや、そんなに抱きつかれたら取れないよ」
愛美はどうにかアメを取ろうと俺の腕の中でもがく。
確かにお腹は空いてるけど、今はこうしていたい。
「だって愛美、甘い香りするし」
耳元でささやくと愛美がビクッと反応する。
あ、かわいい。
そんな反応を示されるとますます離したくなくなってしまうな。
そう思ったのもつかの間、愛美は器用に体を動かしポケットからアメ玉を取り出すと俺の口に放り込んだ。
ん、ソーダ味。
甘さを広げながらシュワッと口の中で溶けていく。
「これで大丈夫?」
愛美は顔を紅潮させながら心配そうに聞いてくる。
だけど、あめ玉ひとつだけでは腹がへった狼に足りるわけがない。