甘党オオカミくん



だから…
そのリンゴの頬やさくらんぼ色の唇をいますぐ食べさせてくれないか?



「これもいいんだけどさ…」



愛美の顎にそっと手をかけて上向かせると、俺の視界にさくらんぼのような艶やかな唇が映りこむ。


甘美な香りを漂わせる唇を前にして俺の体温は次第に熱を上げていく。



ーその唇に触れたい。



熱に浮かされるように俺はゆっくり愛美に顔を近づけていく。


だけど「まだダメだ」と頭の片隅で牽制する俺がいる。



ーそれなら…こうすればいいだけだ。



俺は愛美に許可を求めるべく口を開く。


許可、というのとは少し違うかもしれないけど。



「俺…愛美からの甘いものが欲しいんだけど」


俺から近づくのがダメなら愛実から近づいてもらえばいいだけのことだ。


愛美は驚いた顔をしたあと、俺から視線をそらした。



「ねぇ…ダメ?」



甘えるように言うと、愛実はどうすればいいのかわからないという表情を浮かべた。


しばらく眺めていると愛美の視線がこちらへ戻り、決意したようにその唇が開かれた。


その口から出る言葉はOKか、NOか。


俺の心の中で期待と不安が入り交じる。


その紅い魅力的な唇はもう目前だ。
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