一人じゃんけん
「だからごめんって言ってるじゃーん」

 これだけ言ってもヘラヘラしている紅子ちゃんの態度に、私の堪忍袋は爆発。

「謝れば許されると思ってんの!? 紅子ちゃん他の友達にもこういうことしてるんだよね!? まじで、友達無くすよ!?」

 私はここまで言って、ハッと口をつぐむ。

 紅子ちゃんは俯いて、肩を震わせていた。


「そこまで言うこと無いじゃんっ! ひどい……」

「はぁ? ひどい? 私は本心を言っただけ!! あんたの方がよっぽどひどいわよ!」

 そこまで言って、目を見開く。

「ひどいよ……」


 ――紅子ちゃんは、泣いていた。
 ポロポロと涙が床に落ちると、だんだん人が集まってきた。

 そうだ、ここは休み時間の賑やかな廊下。
 異変を感じた野次馬が集まるのに時間はかからない。

「どうしたの、紅子?」

 昨日、トイレに居た早紀という女の子が紅子ちゃんに駆け寄る。



「なんだなんだぁー?」

「なんかさぁ、長尾が泣かせたっぽい」

 野次馬の男子の一言に、私は振り向く。
 私が睨むと、男子は悪怯れた様子も無く言う。

「だってさぁ、長尾がさんざん悪口言ってたじゃん」

 悪口言ってた?
 どういう耳してんの?

「耳鼻科行けよ。悪口とか一つも言ってないし」

 キレてる私は喧嘩腰。
 その言葉は男子をムカつかせたようだ。
< 15 / 66 >

この作品をシェア

pagetop