一人じゃんけん
「紅子ちゃん…………?」
道路の向こうで、紅子ちゃんが楽しそうに歩いていた。
「何で……」
私の彼氏――阪本幹太と。
「幹ちゃん…………!」
手を繋いで。
「菜々――」
のぞみが何か言おうとしたが、それを聞かずに私は走りだした。
横断歩道も無い車道を、勢い良く横切る。
途中で、車にぶつかりそうになる。
「あぶねぇだろうが!」
運転手にそんなことを怒鳴られたが、振り向きもせずに走った。
そして、幹ちゃんの腕を後ろから掴む。
「幹ちゃんっ……!」
「――げ、菜々未!?」
幹ちゃんが振り向いて、汚いものを見るかのような目で私を見た。
――げ、って何?
同時に、紅子ちゃんも振り返った。
少し驚いたような表情をしたが、すぐにわざとらしく言った。
「あれぇ、菜々未!? 帰り道こっちじゃないよね?」
――――は?
何言ってるの?
何、平然としてるの?
「どういうことっ……?」
私は二人を睨みながら言う。
「いや、違っ――」
「ど、う、い、う、こ、と、?」
幹ちゃんが何かもごもごしているのが私をさらに苛立たせ、私は語勢をさらに強くして言った。
すると紅子ちゃんは、耳を疑うような一言を放った。