一人じゃんけん
 ――――家。

「勢い余ってあんなこと言ったけど――」

 私は自分の部屋で、溜め息をついた。

「許さないって言ってもどうしよう……」

 勉強机の椅子に座って、くるくる回りつつ考える。


 いじめる?
 ――いいや、だめだめ。

 幹ちゃんを奪う?
 ――生涯会わない宣言してきたばかりだし。

 紅子ちゃんをこらしめる?
 ――どうやって?


 殴る? 蹴る?
 ――先生とかにチクられて終わりだな。

 もっとひどいこと?
 ――警察行きだな。


 かと言って、何もしないのは癪に障る。
 っていうか怒りが収まらない!

「はぁー……」

 二度目のため息はさっきよりも深かった。

 ソファーに寝転がって、何気なく携帯を開く。


 ふと、思い出した。
 コメントの言葉を――


 ―― 一人じゃんけんでやっつけちゃえ――


「……馬鹿馬鹿しい」


 そんなので人をやっつける、なんて不可能だ。
 それが出来たら皆やってる。


 でも――好奇心が疼く。


「いやいやいや! 何下らないこと考えてんの!」

 ぶんぶんと首を振って、甘い考えを弾き出す。


 ただの遊びだよね、きっと――


「………………」

< 30 / 66 >

この作品をシェア

pagetop