一人じゃんけん
十節 突如
「いらっしゃいませー!」
店に入った途端、店員の明るい声が聞こえてくる。
「あの、中二の妹のプレゼントを買いに来たんですが、何かおすすめはありますか?」
こう聞くのは少し恥ずかしかったが、これが一番手っ取り早く確実な手である。
「そうですね〜」
考える間も笑顔を絶やさない店員に、少し尊敬の意を抱いていると、店員が近くのネックレスを取り出した。
「アクセサリーでしたら、こちらのネックレスなどはどうでしょうか? そう派手でもなくて中学生の妹さんには合うと思いますが」
俺は店員の話を聞きながら、そのネックレスを眺める。
シンプルなクロスだけど、交差しているところに巻かれた小さなチェーンみたいなものが少し気に入った。
確かにこれなら、菜々未にも合うだろう。
っていうか、俺がしてても大丈夫そうかもな。
「――どうでしょうか?」
商品の説明を一通り終えた店員が、ネックレスをずいと差し出す。
「じゃあ、それ買います」
「ありがとうございます。レジの方へどうぞ――」
意外と速く、買い物が終わってしまった。