一人じゃんけん
二節 憎悪
唯は一人になった途端、派手なバッグから携帯電話を取り出した。
慣れた手付きで何かを打ち込むと、携帯を耳にあてた。
電話するのか……と思っていたら、俺のポケットがぶるぶる震えだした。
「わっ!?」
まさか――
おそるおそる携帯を取り出し画面を見ると、着信:唯の文字が。
「電話ですか?」
彼女が問う。
「いやいやただのメールです!!」
慌てた俺は何故か敬語になった。
そして携帯の電源を切った。
「……切れたし」
唯が不服そうにそう呟いた。
っていうか次の男って俺!?
約束してねぇし!!
「もう食べ終わったし行こうかっ」
唯に気付かれないように、彼女に提案する。
「はい、そうですね」
彼女が提案に乗ってくれたので、ホッと胸をなでおろす。
そうして何とか気付かれずに店を出ることが出来た。