一人じゃんけん
 一人でしゃべって何やって――?

「あ……ふぇ、ってしぉん!」

「――誰っ!?」

 俺の心臓がドクンと飛び跳ねる。

 何でこんなときに出るんだ俺のくしゃみ!!

 そんなことを思っている間に、菜々未の部屋のドアが少しずつ開く。

「え、お、お兄ちゃ……!?」

 あーあ、見つかっちまった。

「よぉ、妹よ……」



「盗み聞きしてたの!? 最っ低!」

 夜中なので、同じ二階で寝ている母親にばれぬように小声で怒る菜々未。

「だってお前の部屋から物音が聞こえたり悲鳴が聞こえたりで、心配したんだからな!」

 俺、思わず逆ギレ。

「そのくらい寝相とか鼾かもしれないじゃん! 一々来ないでよ変態!」

「鼾できゃっ! とか言うか普通!」

「言うからバーカ!」

「バカって言ったほうがバカですからー!」

 我ながら、小学生レベルの反論。

「じゃあお兄ちゃんもバカって言ったからバカじゃん!」

「俺は例外!!」

「何で!!」

「何でも!!」


 カタン……


「「っ!?」」

 小さな物音に、俺と菜々未は言い争いをピタリと止めて神経を研ぎ澄ます。

 俺の心臓が盛んに動き回り、全身から汗が滲み出る。



「……喧嘩、止めよう?」

「……だな」
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