君の全てを誰よりも愛そう
「田中、5分の約束だったよな??」
合コンの場所であるカラオケボックスで両脇をガッチリ固められてる俺。
「バイトの時間までまだまだあんだろ~!いいじゃねぇか!さ、自己紹介しようぜ♪」
田中ルンルンだな。
俺らの目の前には隣の女子大の子たちが6人ほど並んでいて、俺ら側には男が俺を含めて6人。
くそ、はじめっから逃がす気なかったんじゃねぇの?
斎藤さんの仕事が残ってんだっつの。
その思いとは裏腹に進んでいく自己紹介。
全然ノリ気じゃない俺の代わりに田中が勝手に自己紹介してた。
「高木くん、よろしくね!あたし坂野真奈美って言うんだ」
「悪いけど俺すぐ帰るんだ」
席替えの隙を見計らって帰ろうと席を立ちあがったところ、女の子に話しかけられた。
「そうなの?残念・・。じゃあ、アドレスだけでも交換してくれない?」
「本当悪いけど、俺急いでるから。じゃあ」
机に金だけおいてカラオケボックスをでた。
ったく。余計な時間とられたな。
すぐさま家に帰って書類印刷しねぇと。
「あれ?」
家までの道を走っていると自販機にもたれ掛かってる女の子。
紗絵と同じ制服だったからなんとなく気になって、顔をちらっと覗いた。
「やっぱ、紗絵じゃん」
背格好が似ていたからもしかしたらって思ったらやっぱり紗絵。
「あ、コウさん。その節はお世話になりました」
ペコリと頭を下げて薄らと微笑む紗絵。
全く、心配したっつの。
「ったくよー。心配したろ、勝手にいなくなって」
頭をポンポンしてそういえば、紗絵はポカンとこっちをみてくる。
「どした?」
「あ、なんかコウさんって優しい人だなって・・思って・・」
心配すんのなんて当たり前だろ。
中学生でしかもこんな可愛い子、心配するに決まってる。