君の全てを誰よりも愛そう


「ここ、俺の家。狭くて悪いな」



一人暮らしをしている俺の部屋に紗絵を連れてきた。


1LDKの一人暮らし用の部屋だ。一人で住む分には十分なんだけどな。



「あ、いえ。むしろ広いですよ」

「リビングは広く見えるけど、俺の部屋は6畳ないくらいでまじ狭いぞ」

「あ、私の部屋3畳なので!それでも広いですよ」



紗絵が笑いながら発したその言葉は一瞬冗談かと思った。



「なになに、紗絵自分の部屋ないってこと?」



自分専用の部屋がなくて共有スペースに3畳分のスペースを確保しているのだろうかと思った俺は、素直に質問をぶつける。



「あ、いえ・・一軒家に住んでるんですけどその物置部屋が私の部屋なんです。だから一人暮らしってなんか憧れますね」



へへと笑う紗絵をみて、仁さんの言葉が頭を過った。


育児放棄の家かもって、言ってたよな。


それに、殴らないでと怯えてた紗絵の姿。


まさか、まさか・・な?


ここで俺が紗絵に問い詰めて、何かしてやれることがあるのか?


紗絵を追い詰めることになるんじゃないのか。


そう思ったら深く突っ込むことは出来なかった。



「じゃ、一人暮らし気分で今日はここ使ってていいよ。俺バイトしてくるから。ただし、今回は黙って消えるのは禁止な?」



考えた末に俺が選んだ言葉はそれだった。


20歳といえど、まだまだガキな俺が一人で考えて行動に移して紗絵を追い詰めてはいけないと思った結果だ。


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