君の全てを誰よりも愛そう
「じゃ、俺行ってくるから。留守番頼むわ」
「あ、はい。本当にありがとうございます・・」
「気にすんなよ。鍵かけとけな?不安だったらチェーンもして。俺帰ってきたらあけてくれればいいからさ」
そう言えば紗絵はニコッと頷いた。
なんとなく後ろ髪引かれる思いで家を出て仁さんの待つカフェへと足を急がせる。
紗絵のこと仁さんに相談してみるか。
「おはようございます」
「おお、今日も頼むわ」
相変わらずカッケーおっさんだな仁さん。
とか、出勤するたびに思ってしまう。
とりあえず、
「ちょっと相談があるんですけど、いいですか?」
「ん?開店までまだあるからな、いいぞ。なんとなく予想ついてっけど」
はははーん、ですよね。
と思いつつも紗絵について引っかかることを仁さんに伝える。
「あのな、常連の池谷さんっておっちゃんいんだろ?客の個人情報だから本当は言ったらダメなんだけどな?あの人紗絵ちゃんとこの中学の教師だから、ちょっと探りいれてみたんだ」
そっから仁さんが俺に教えてくれたことは・・
紗絵の親は一度も学校に訪れていないこと。
保護者面談や三者面談に訪れるのは紗絵の歳の離れた従弟だということ。
紗絵が週に一回から二回は必ず休むこと。
休んでいる理由は腹痛ということになっているらしいが、実際のとこそうではないだろうということだった。
「そうでしたか・・・。ありがとうございます。実は紗絵、今俺んちにいるんです」
「そうか。それが正解なのか、大人の俺には判断しかねるが。個人の感情としてはちょっと安心してる、かな」
世間体を考えれば、中学生の紗絵を家に留めておくなんてのは良くないことだろう。
でも、仁さんからその話をきいて・・そうして良かったと思う俺がいる。